もともと、海岸の磯や海辺に近い岩場や雑木林の縁に生える植物だが、庭
の下草に使われはじめてからはどこにでも見られるようになった。
同じキク科でフキに似ているこの草は故郷伊豆半島の海岸線の岩場に沿っ
た草叢や雑木林の縁沿いに自生が多く、晩秋になると海岸に近い山肌一面
が山吹色に染まって素晴らしい景観だった。
早春の頃、ラクダのようなモコモコした毛を被った指ほどもある太い茎(葉柄)
を摘んでくると、母はそれを糠漬けにしたり、長い時間をかけて煮詰めてキャラ
ブキを作ってくれた。コリコリした食感の糠漬けの味や、とろけるような食感と風味
のキャラブキは忘れることのできない“お袋の味”だった。ところが、残念なことに
田舎の次の世代の人達にはこれを食べる習慣がなくなったそうだ。
黄色い花を咲かせる植物はキク科の植物に多いが、ヒマワリ、キンケイギク、
セイタカアワダチソウなどの外来キク科植物にも共通している。それ以外にも黄
色の花を咲かせる種類が多いことを不思議に思って調べているうちに、植物の
花色を研究する奇特な植物学者の存在を知った。黄色の花を咲かせる植物
は白に次いで二番目に多く全体の約30%を占めるというが、この色は花粉を
媒介する昆虫類が好む色であることから、植物もそのように進化していったので
あろうと彼の論文は締め括られていた。
そういえば、どの花を見ても花粉の色はほとんどが黄色である。
昭和25年、故郷南伊豆に「静岡県有用植物園」が開園した。国内外の有
益な植物を収集し、地元農業の振興や伊豆の観光資源として普及する目的
だったそうである。植物園に務める親戚の人が届けてくれる苗を父はあちこちに
植えては楽しんでいた。私が小学校2~3年(昭和30年代)の頃だった。
植物園から届いた植物は、トケイソウ、エリスリナ、キダチチョウセンアサガ
オ、ランタナなど耐寒性に優れた熱帯、亜熱帯系が多かった。温暖化の進ん
だ今日とは異なり、南伊豆といえども霜の降りる冬は寒くて藁囲いしたものは冬を
越したが、外に置かれたままの植物の大半が1~2回の霜で枯れてしまった。
よく晴れた穏やかな昼下がり当てもなく散歩に出かけた。寒くて寝過ごした今
朝の散歩を補うつもりではなかったが、近所のきれいに管理された庭を眺めなが
ら公園の方へブラブラと歩いて行った。歩いた先の陽だまりに咲き始めたばかり
の野水仙を見つけて一瞬ほんのりとした気分になったが、その脇に咲くランタ
ナの花を見た途端に興醒めしてしまった。そして、こんな外来植物ごときに、季節
の移り変る景色まで奪われてはたまったものではないと強い憤りを覚えた。
あちこちに生えては咲きまくるランタナは『世界の侵略的外来植物』に選ばれ
るだけのことのある実にしたたかな植物だ。