オミクロン株の特徴とその対策

新型コロナの終息を願って 惣田昱夫(20220216)

 オミクロン株の1日の感染者数は全国で大台の10万人を超えてしまいました。
 今、オミクロン株の感染者の増加で医療機関はひっ迫し、基礎疾患を持った人の重症化も 目立っています。急激な感染者拡大で第6波を引き起こしているオミクロン株とはいったい どのような特徴を持ったウイルスなのでしょうか。オミクロン株について考えてみます。

新型コロナウイルスの種類と変異
 感染爆発を引き起こしているオミクロン株の特徴を見ていきたいと思います。
 新型コロナウイルスは中国の重慶から始まりました。そこから各国に広がり各国で変異した株 が検出され、感染者が増加しました。イギリスで感染力の強い株が分離されイギリス型と呼ばれ ましたが、1918年世界中をパンデミックに陥れたスペイン風邪の教訓からイギリス型、南アフ リカ型ということをやめ、WHOはギリシャ文字を使った名前表記に変えました。イギリス型はア ルファ株に、感染力が強く重症化を引き起こすインド型はデルタ株となりました。現在13種類 の株に名前がついていますが、Νは新しい、Ξは名前に関係するとの配慮から避け、ミューから飛 んでオミクロン株と名付けられました。このオミクロン株が世界中に広がり各国ともパンデミ ックとなっています。
 感染力の強いオミクロン株の特徴を見てみます。図1(文献1)で分かるように感染にかかわ るスパイクタンパク質が、これまでのコロナウイルスと違い30ケ所以上変異していることが 分かります。

国立感染症研究所では、2021年12月8日にオミクロン株の特徴を発表(文献2)しています。 発表内容によると、(1)スパイクタンパク質に30か所程度の変異、3か所の小欠損と1か所の挿入部 位を持つ。(2)15か所程度の変異は受容体結合部位に存在する。(3) G339D、S477N、T478K、N501Y 変異等はヒトの細胞の感染受容体ACE2への親和性を高める。(4) K417N N440K、E484A等はモノク ローナル抗体からの逃避が示唆される。(5) H655Y、N679K、P681H変異(青線の部分)は細胞への侵入し やすさに関連する。(6)ヌクレオカプシドタンパク質におけるR203K、G204R変異はアルファ株、ガ ンマ株、ラムダ株にも存在するが感染・伝播性を高める可能性がある、としています。特に注目さ れるのは (3)と(5)で感染力の強さ、(3)はブレイクスルー感染力に関するものです。非構造タン パク質の一種nsp6の105-107欠失はアルファ株、ベータ株、ガンマ株、ラムダ株にも存在する変異 ですが、インターフェロンに拮抗的に作用する、ウイルスの増殖阻止や免疫系の調整などの働きを する自然免疫へ拮抗的に作用し免疫逃避を高める可能性がある、と指摘しています。つまりオミクロ ン株は感染力が強く、世代に関係なく感染させる、またブレイクスルー感染させる性質を持っている ということです。
 12月の初めに日本では、オミクロン株の感染者は数名程度でした。「(東京で)対策を取らない場 合には1月末には1日3000人を超える」と12月17日に名工大平田教授の将来予測が出ていましたが、オミ クロンの感染力は予想を超え、早くも1月13日には3000人を上回わり、全国でも18850人と2万人近い 感染者となりました。

症状と後遺症問題

 オミクロン株の症状と後遺症について考察します。他都道府県に先駆けて感染爆発した沖縄県の 事例を図2(文献3)に示しました。これによると発熱(72%)、咳(58%)、全身倦怠感(50%)、 咽頭痛(44%)、・・・、と続いて、嗅覚・味覚障害は2%、無症状が4%となっていて、 重症者はなく、肺炎症状の患者もいないことが分かります。 全体としては中等症と軽い症状者が多いことが分かります。ただ最近の報告では感染による 死亡者が増加しています。特に基礎疾患を有する高齢者が感染し、死亡する事例が増えています。 感染力が強いこともあり爆発的に感染者が増加した結果、基礎疾患を有する高齢者に感染が広がると 基礎疾患が悪化し、重症化する可能性があります。 また5歳以下の子供、小中学校での感染、若い人への感染、ワクチン接種者への感染も広がっ ていますので、軽症が多いとはいえ早期の治療は重症化させないために必要です。
 新型コロナとオミクロン株の後遺症を見てみましょう。世田谷区などでは治った患者のその後と してアンケートを取りまとめ、後遺症対策が重要と報告しています。

後遺症は図3(文献4)を見て いただくと分かるように、倦怠感やブレインフォグ、息苦しさ、それにデルタ株までは味覚、嗅覚 障害が残りました。オミクロン株では味覚嗅覚障害は見られませんが、精神混乱、過活動性せん妄 の症状が残るようです。オミクロン株は「感染人数が多いだけで弱毒だから問題ない。やがて普通の カゼになるだろう」という見方がありますが、その見方は間違っています。感染者の絶対数が多い ことは、そのまま後遺症発症者の絶対数にもつながります。精神混乱、過活動性せん妄の症状は、 新型コロナ群が小胞体の内側に向かって芽を出し、細胞外へと出て行ってしまうことに関係します。 後に残された細胞の小胞体が穴だらけのボロボロになり再生不能細胞となり繊維化します。

ニューロンや中枢神経に感染すると治ったあと、意識全体が霧のかかったようになる ブレインフォグも発症します。 軽症が多い子供たちに、これらの症状が残った場合を考えると 将来への不安が残ります。
 また東洋人、日本人は特殊な遺伝子があるとする見方があります。感染者に対する死亡率を図4 (文献5)に示しました。日本は諸外国と比べても死亡率は上位にあります。諸外国に比べ感染者 が少ないので遺伝子で守られているように見えるだけなのです。

ワクチンと抗ウイルス薬

 日本はワクチン接種が遅れています。ブレイクスルー感染があったとしても、ワクチン接種後の 中和抗体価はアストラprime+モデルナが最も高いという結果やリアルワールドでのワクチン効果(VE) は3回接種で上昇するといわれています。中和抗体以外の免疫が関与し、重症化防止効果も高いといわ れています。オミクロン株の感染により基礎疾患が悪化する事例が増えていることから、特に持病のあ る高齢者の接種は急ぐ必要があります。
 治療としての抗ウイルス薬の現状を図5に示しました。図では未定となっていますが、塩野義製 薬の治療薬も申請段階になっています。治療薬の確保も遅くなっていることは残念なことです。

先進的事例に学び感染対策を急ごう
 先進事例を学び感染対策を早急に進めてもらいたいと思います。第5波での死者100万人当たりの 割合は全国平均で145.5人、東京都227人、神奈川県184.4人でした。鳥取県では9.0でした。鳥取県の 対策は、(1)早期検査、(2)早期入院、(3)早期治療を行いました。加えて感染症の専門医の養成、 メディカルチェックセンターを作ったこと、医者への休業補償を行ったこと、地域のお医者さんと 保健所の連携も重要視したことが死亡者を少なくすることにつながりました。早期検査はすべての 要と報告しています。
 オミクロン株の流行により高齢者の感染が増加し、150名/日を超える死亡という数字が出てきて います。神奈川県でも高齢者施設のクラスターで亡くなられた7名の方は、入院ではなく看取りと いう選択が取られました。何としてもこの感染拡大が高齢者への広がらないようにすること、高齢 者の重症化を防ぐためのワクチン接種の加速化が急務となります。とりわけ高齢者施設職員の定期 検査や今流行の中心になっている学校・保育園のきめ細かな感染防止対策への支援「教職員の追加 ワクチン接種、定期検査、陽性者が出た時の全校・園検査(寝屋川市では実施)など検査と組み合 わせた科学的対応」が求められています。検査の拡大はやる気になりさえすれば、日本の科学技術の 水準から言えばできるはずです。この際重要なのはPCR検査体制の抜本的な強化です。早い診断が できなければ、発症後の投与タイミングが限られいる抗ウイルス剤の有効投与時期を逸失して しまいます。また無症状者の社会的検査はPCRでしかできません。PCR検査では、 ロボットを使って1日2500件/基の検査が可能であり、50基稼働すると1日あたり最大12万件の 検査ができると、先日川崎重工が発表(文献6)しています。 このロボットを活用しPCR検査を改善し、早期発見、早期治療体制を作ってほしいと思います。 更に感染力が強いといわれる「オミクロン株BA・2」の進行も想定されるなか、ワクチン・検査・ 治療薬などをセットとした総合的なパッケージで対応しないと、オミクロン株に打ち勝つのは 困難であると考えています。
 みなし陽性者も増えています。「みなし陽性者」の体調の急変時、頼る先のない「医療難民」 を生まないよう、政府、自治体には感染対策を十分取ってほしいと思います。


文献
1. まずい変異がてんこ盛り オミクロン型出現のわけ、日経サイエンス2021.12.24
2. SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第3報)、国立感染症研究所、2021.12.8
3. オミクロン株と診断された50人どんな症状?沖縄6割が「ブレイクスルー感染」、沖縄タイムス、2022.1.9
4. COVID-19危うい後遺症、出村政彬、日経サイエンス、2021.06
5. 感染者数あたりの死亡者の割合,小野昌弘、ツイッター、2022.1.9
6. 川崎重工、PCR検査1日最大12万件 ロボット活用、日経新聞、2022.1.28