その1 男・後妻業
私事ですが、実は久し振りに行政書士の仕事が舞い込んできまして、悪戦苦闘しています。
その内容は、身寄りのない独身女性から、遺言書を作成してほしいとの依頼です。
さっそく依頼人宅を訪問したのですが、これがまた大変なことになりました。
依頼人の自宅は一軒家で、お花とお茶の師匠さんです。
年齢不詳、多分、私と同年齢か、何歳か年上の人です。容姿端麗、和服姿でした。
その家の玄関口には南天の実が水面に浮かべてある手水鉢があり、ポトン、ポトンと水がしたたる快い音がします。
玄関を入ると、季節の花が水盤に綺麗に生けてありました。
のれんも麻の生地のような日本独特の雰囲気で揺れています。
これは大変だぁ~。
またまた、以前お話しした東北大学でのニガイ経験のような「場違いな所へ来てしまった。」という心境です。
応接間に上がり、腰掛けに座りました。
緑茶が出ます。お茶菓子も出ます。品格のある立ち居振る舞いです。
当然です。お茶とお花の先生ですから。
目を机上の書類に釘付けにした体勢を作り、現在の状況をお聞きしたら、身よりはなく、会ったこともない甥や姪が他県に数名いるようです。
私は、引き続き顔をノートにくっつけ、その状況をメモし、「遺言書の草案を1週間後に作成します。」と返事はしたものの、どうもやさしい雰囲気、日本の文化が充満している雰囲気で、正に「場違いな所に来てしまった。」と思いきや、帰り際に、「今、作ったお惣菜です。持って行って下さい。」ときました。
料理の名前はさっぱり解りませんでしたが、よく煮込んで柔らかく、綺麗に四角いタッパーに詰めてありました。
その後も、打ち合せに訪問する毎に、お惣菜を頂いています。
でも、これからどうなることかと心配です。
その後、遺言書の作成、死後事務委任契約書の作成など必要な書類を作成しています。
現在進行形です。
近所から、「最近、お花の先生のところに変な男が出入りしている。」という噂が立たないと良いのですが・・・。
お金持ちの老人男性のところに、若い女性が近づき、何かと世話を焼き、家に入り込んで財産をせしめるという『後妻業(ごさいぎょう)』という商売があるようですが、私も『男・後妻業』とならないように気をつけます。
学生時代に、親友のI君(I君と言えば、皆さん十分に知っている人です)から、「坂部君は人妻殺しだなぁ。」と言われた言葉が頭をよぎりました。
そんなに女性に特別、親切に、優しくした覚えはないのにと思ったのですが、やはり、そうなんだろうかと約50年前を思い出しました。
その2 これは相続税の対象か
私は、「今後とも、息子達に迷惑を掛けない。」という気持ちがあります。
先日、葬儀会社に私の葬儀について相談する機会があり、細かな説明を受けました。
結論は「毎月積み立てをすることが良いのでは。」ということでした。
説明によると、『松・竹・梅』ではありませんが、「毎月、3,000円、2,000円、1,000円の積み立てコースがあります。」という説明でした。
私は真ん中の2,000円コースで十分と思い、来月から積立をすることを契約しました。
でも少し気に掛かったので、「3つのコースについては、それぞれ何か特典でもあるのですか。」と聞きましたら、ちょっと年増の担当者のお姉さんは、「2,000円コースは納棺時にドライ・アイス無料サービスがあります。3,000円コースは葬儀に際して霊柩車の手配無料サービスがあります。」と、表情も変えずスラスラと答えるのです。
もう死んでしまった私にドライ・アイス無料サービス? あるいは霊柩車の無料手配サービス? なんだか、変な気持ちになりました。
後日、その話を我が事務所のスタッフに話したところ、法学部出身のスタッフは、「この特典のあるコースを契約した人は既に死亡した人なので、死亡者の得たサービス(財産)を受け継いだ葬儀を行う人がそれを得ることは、つまり、相続が発生するのではないだろうか。」と言うのです。
相続税の対象物件と言うことです。これは大変なことになりました。
私の遺言書には「ドライアイスサービスから得た『財産(利益)』は息子に相続する。」と書く必要があるのかもしれない、と思いました。
後日、友人の税理士に聞きましたところ、結論から申しますと、「葬儀関係については、相続は発生しない。」と言うことでした。
一応、安心しました。
その3 三文安い
「目に入れても痛くない。」とはこのことです。
先日、孫を連れて買い物に行きました。
大きなスーパーマーケットの駐車場に着くと、突然、孫が「おじいちゃん、どうして僕にそんなに親切にしてくれるの?」と言うのです。
特別に親切にしているわけでもないのですが、何かと面倒を見ているし、食事にも連れて行くし、名古屋への買い物も連れて行き、何か欲しいものを買ってあげるなど、確かに可愛がっています。
「目に入れても痛くない。」と言うことです。
その時です。突然、目の前を見知らぬ息子さんが、お母さんを乗せた車椅子を押して、私たちの目の前を横切る光景が目に入りました。
『これだ。』と思い、咄嗟に「おじいちゃんが歩けなくなったら、あの様に、孝樹君(孫の名前タカキ)に車椅子を押してもらい、どこかへ連れて行ってほしいからだよ。」と答えました。
孫は、「別に、いいけど~。」と言う返事でした。
なんだか軟弱な返事です。
『おじいちゃん子、おばあちゃん子は三文安い。』と言うだけあって、やさしくて、やさしくて、このままではとても厳しい昨今の社会では生きていけない、と思いました。
と言っても、良い策はなく、途方に暮れているアンポンタン老人でした。
以上三題、毎日が緊張感、不安感、脱力感の連続です。これからも頑張るアンポンタン老人にエールを・・・・・。
それでは皆さま、ごきげんよう、さようなら。
遠く愛知の地から 坂部孝夫拝